原因を一つに決めつけない「食いしばり解体新書」
「食いしばりの原因って何ですか?」施術をしていると、よく聞かれる質問です。
「ストレスですか?」
「歯並びが悪いからですか?」
「顎の筋肉が硬いからですか?」
「姿勢が悪いからですか?」
もちろん、これらが関係することはあります。
でも、食いしばりを長く見ていると、ひとつの原因だけで説明するのは難しいと感じることがあります。
なぜなら、同じ「食いしばり」という症状でも、その背景は人によって違うからです。
そこで今回は、「そもそも、なぜ人は食いしばるのか?」
というところから、食いしばりを一つずつ解体してみたいと思います。
まず、「食いしばり=ストレス」と考えていませんか?
食いしばりというと、
「仕事が忙しいから」
「ストレスが溜まっているから」
「精神的に緊張しているから」
というイメージを持つ方も多いと思います。
確かに、精神的な緊張やストレスが身体の緊張につながり、食いしばりに関係することはあります。
ただ、
「食いしばり=ストレス」だけで終わらせてしまうと、少し説明が足りません。
なぜなら、「特にストレスを感じていないのに食いしばっている」という人もいるからです。
では、なぜでしょう?
ここから少しずつ、「なぜ?」を掘っていきます。
なぜ、食いしばるのか?
まず一つ目の「なぜ」です。
当然ですが、答えは、顎に力が入っているから。
では、なぜ顎に力が入るのでしょうか?
ここからが大切です。
顎だけを見れば、「顎の筋肉が緊張している」ということになります。
でも、人間の身体は顎だけで動いているわけではありません。
姿勢を保つこと、呼吸すること、身体を動かすこと、集中すること
眠ること、仕事をすること
こうした一つひとつの活動には、全身の筋肉や神経が関わっています。
つまり、顎に力が入っているとき、顎だけで何かが起きているとは限らない。
ここが、食いしばりを考えるうえで大切なポイントです。
食いしばりの背景①「緊張・ストレス」
まず考えられるのが、身体や心の緊張です。
仕事で集中しているとき
時間に追われているとき
人間関係で気を使っているとき
何かを考え続けているとき
こうした場面では、自分ではリラックスしているつもりでも、身体には力が入っていることがあります。
そして、その緊張の一つの表れとして、顎に力が入ることがあります。
ただし、「食いしばり=ストレスが原因」と決めつける必要はありません。
ストレスが少ないように感じる人にも、食いしばりは起こります。
では、他には何があるのでしょうか?
食いしばりの背景②「姿勢・身体の使い方」
次に考えたいのが、身体の使い方です。
例えば、
スマートフォンを長時間見る
パソコンの前に何時間も座る
いつも同じ側で荷物を持つ
脚を組む
同じ姿勢で長時間過ごす
こうした日常のクセは、一つひとつを見ると特別なことではありません。
でも、毎日のように繰り返されれば、身体の使い方にも偏りが生まれます。
すると身体は、その状態の中でバランスを取ろうとします。
その結果として、首や肩、顎などに余分な力が入りやすくなることがあります。
ここでも、「姿勢が悪いから食いしばる」と単純に考えるのではなく、
「普段、自分の身体をどう使っているのか?」を見ることが大切です。
食いしばりの背景③「呼吸」
意外に感じる方もいるかもしれませんが、呼吸も身体の緊張と深く関係しています。
緊張しているとき、呼吸が浅くなっている。
逆に、呼吸がしづらい姿勢が続くことで、身体が緊張している。
このように、呼吸と身体の緊張は一方向ではなく、お互いに影響し合うことがあります。
そして、その緊張状態の中で顎に力が入りやすくなる人もいます。
だから、「顎が疲れているから、顎だけをほぐそう」
ではなく、「今、自分はどんな呼吸をしているんだろう?」と見てみる。
それだけでも、身体の見え方が少し変わってきます。
食いしばりの背景④「睡眠・疲労」
もう一つ見逃せないのが、睡眠や疲労です。
「しっかり寝たはずなのに、朝から顎が疲れている」
「休んでいるのに身体が重い」
「最近、疲れが抜けにくい」
そんなとき、単純に「顎だけの問題」と考えるのではなく、
身体全体が十分に休めているのか?
という視点も必要になります。
睡眠不足や疲労が続けば、身体の緊張状態が続きやすくなることがあります。
そして、その状態の中で顎に力が入っている可能性もあります。
食いしばりの背景⑤「日常の無意識の力み」
そして、意外と見落とされやすいのがこれです。
「自分では食いしばっているつもりがない」というケース。
例えば、
仕事中
スマートフォンを見ているとき
運転中
本を読んでいるとき
細かい作業をしているとき
集中しているとき
ふと気づいたら、奥歯が触れている
そんな経験はありませんか?
これは、食いしばりを考えるうえでとても重要です。
なぜなら、本人が「力を入れている」という自覚がないまま、力が入っていることがあるからです。
「力を抜いてください」と言われても、そもそも力が入っていることに気づいていなければ、抜きようがありません。
ここまで見てくると、食いしばりの見え方が変わってきます
ここまで、
-
緊張・ストレス
-
姿勢・身体の使い方
-
呼吸
-
睡眠・疲労
-
日常の無意識の力み
について見てきました。
でも、ここで一つ注意したいことがあります。
これらを、「食いしばりの原因5つ」
と単純に分けてしまうことです。
実際の身体では、もっと複雑に重なっています。
例えば、
仕事が忙しい
↓
睡眠時間が短くなる
↓
疲労が抜けにくくなる
↓
身体が緊張しやすくなる
↓
呼吸が浅くなる
↓
姿勢も崩れやすくなる
↓
顎に力が入りやすくなる
ということもあります。
つまり、「これが原因です」と一つだけ取り出すより、「今の身体には、何が重なっているんだろう?」
と考えた方が、その人の状態を理解しやすいことがあります。
では、食いしばりは「原因」なのか「結果」なのか?
ここで、もう一つ面白い疑問があります。
例えば、「食いしばりがあるから肩がこる」のでしょうか?
それとも、「肩や首が緊張しているから食いしばる」のでしょうか?
卵が先なのか?
ニワトリが先なのか?
身体では、これを簡単に一つに決められないことがあります。
最初は疲労や姿勢など、別のところから始まっていたとしても、
身体の緊張
↓
顎に力が入る
↓
食いしばりが続く
↓
顎や首・肩などに負担がかかる
↓
さらに身体が緊張する
というように、途中から循環することがあるからです。
だから私は、食いしばりを見るとき、「食いしばりの原因は何ですか?」
という質問だけではなく、「今、この身体の中で何が起きているんだろう?」
と考えるようにしています。
だから、顎だけを見ても分からないことがあります
食いしばりがあると、「顎が硬い」「顎の筋肉が張っている」ということに目が向きます。
もちろん、それも身体に起きている事実の一つです。
でも、それだけでは、「なぜ、今この人の顎に力が入っているのか?」までは分かりません。
顎は、身体から切り離された場所ではありません。
身体の使い方、姿勢、呼吸、睡眠、疲労、日常生活、緊張
そうしたものがつながった中で、顎に力が入っている可能性があります。
だからこそ、「顎をどうするか」だけではなく、「なぜ顎に力が入っているのか?」を見ることが大切だと考えています。
まずは、自分の「食いしばる瞬間」を探してみてください
食いしばりが気になる方は、いきなり何かを頑張って変えようとしなくても大丈夫です。
まずは一日だけ、「自分は、いつ顎に力が入っているんだろう?」と観察してみてください。
仕事中でしょうか?
スマートフォンを見ているときでしょうか?
運転中でしょうか?
集中しているときでしょうか?
家事をしているときでしょうか?
それとも、朝起きたときでしょうか?
そして、もう一つだけ。
「そのとき、自分の身体や心はどんな状態だった?」
と考えてみてください。
疲れていた、急いでいた、集中していた、緊張していた、眠かった、何かを考え続けていた
こうした小さな気づきが、自分の食いしばりを理解する手がかりになることがあります。
まとめ|食いしばりには、一つの答えだけではありません
食いしばりというと、「ストレスが原因」「姿勢が原因」「顎の筋肉が硬いから」
など、一つの理由で説明したくなるものです。
でも、身体はそれほど単純ではありません。
緊張、姿勢、呼吸、睡眠、疲労、身体の使い方、日常の無意識の力み。
いくつもの要素が重なった結果として、顎に力が入りやすくなっていることがあります。
だから私は、「食いしばりの原因は何ですか?」という質問に、一つの答えを当てはめるより、
「あなたの身体では、何が重なっているんだろう?」と考えることを大切にしています。
身体の不調には理由があります。
その理由を知ることができれば、今まで「ただの食いしばり」と思っていたものも、
少し違って見えてくるかもしれません。
あなたの身体を、一番理解できるのは、あなた自身です。
大阪・天王寺の「なおや鍼灸院・整体院」では、
食いしばりだけを切り取るのではなく、
姿勢・呼吸・身体の使い方・生活習慣なども含めて、
なぜ顎に力が入りやすくなっているのかを一緒に考えています。
